聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
のまま頭だけ横へ向けると、彼女の手首の辺りに、カーテンから漏れた光が差していた。姉は僕の同級生の誰よりも綺麗な肌をしている(前に彼女に、肌のことについて褒めると、彼女は「要はイメージなのよ」と分かるような分からないような返答をした)。見ていると、彼女は急に手を引っ込めたので、僕は目を天井に向けた。彼女はポケットから煙草の箱を出して、「あー、そろそろ買いに行かなくちゃ」と言って、僕に向かって、ねえ暁世(あきせ。この名前は姉が発音すると綺麗に聞こえる)も吸う? と訊いた。「紗々が吸ったことにしてくれるなら」と言って、僕は一本もらった。マールボロのライトだ。
「何て言うのかな」
と言って姉は話し始
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