聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
に横たわった。僕は彼女に、安定剤を一錠飲ませて、彼女の傍らに腰かけて、紗々の背中を撫でた。彼女の力が抜けてくるまで、長い時間そうしていた。
紗々は眼を瞑ったままでくすりと笑って、「暁世、ありがとう、暁世。ごめんね。少しだけでいいから、隣で寝てくれない?」と言った。僕がそうすると、彼女は何故か、二、三度僕の頭を撫でた。それから、僕が彼女の頭を撫でると、紗々はすぐに眠ってしまった。僕は彼女の頭を撫で続けた。
一時間ほどもそうしていただろうか、僕は眠れずに、起き上がって、机の前の椅子に座って、紗々の顔を見ていた。幼い子供のように、また何か、どうにもならない何かに耐えているような表情で、紗々は
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