聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
由が、感情的必然性があって、書いていたのか、ううん、生きているのか、急に分からなくなる」と言って煙草を吸って、大分長いこと経ってから、煙を吐いた。
「ただこうしていることの、自然さ、自然な満足、なんてあればもっと素敵だし、それこそ当たり前に自然なことだと、私は思うのに。……、とても不安だわ。今日は、朝から、とても不安なの」
それから、姉は煙草の火を、灰皿の底で丁寧に揉み消して(それは寂しいくらいに、ゆっくりとした動作だった)、
「書くこと、喋ること、それはときどき、空虚じゃないんだけど、悲しいくらい私とは関係ないことだと思う。私は、知っている、生きることは、ただ生きていることだけなんだって
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