聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
 
てくると、紗々は僕の部屋にいて、ベッドに腰かけて、いつになく心許なさそうに、両腕で自分の身体を抱きしめるようにしたかと思うと、すぐに腕を拡げたりしていて、僕が何も言わずに椅子に座ると、僕の方を一瞬見て、またすぐに目を逸らした。しかしすぐに寧ろ僕を凝視するように、上目遣いで僕の方を見た。
 僕は姉が何か喋り始めるまで待っていたのだけど、彼女がなかなか口を開かなかったので、あきらめて教科書を拡げた。姉は視線をずっと僕の方に向けて、僕の一挙一動を、馴染みの無い風景を見るかのようにじっと見ていた。
 僕が、教科書を見るともなく見ていると、しばらくして紗々は、黙ったままで、ぼんやりした挙動で、ライターを
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