聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
 
、「ハロー」とか「こんにちは」とか、そんなことなの。
そんなことなのだけれど、彼らにはね、自分の気持ちや、誰かに対する、例えば幸せを願う気持ち、親愛の気持ち、愛情、静けさが素敵なこと、いろいろなことを、ただ「こんにちは」に集約出来るとしか思えなくて、何度も何度も「こんにちは」のあとに続けて、何事かを書くのだけど、書くほどに「こんにちは」の優しい静けさが台無しになるのを、殆ど嫌悪を伴いながら感じるの、……手紙の線や字が歪んでいくのをね。
それで、何枚も何枚も手紙を破り捨てたあと、諦めて、ベッドに座り込んで、空中の何かに向かって笑いかけるみたいに、長いこと微笑んだり、それから泣き出しそうになっては
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