聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
にそっと優しくするか(それは相手には気付かれないかもしれない)、それとも迷いなく山の奥の奥の方まで歩いていって、夕暮れ近くなって、一本の木に目印(それはもし本当に死にたくなったときに、首を吊るための木、そのための目印)を付けてから「暗くならない内に帰ろう」なんて呟くの。
それから、自分が言った言葉が、奇妙に、何というのかな、今まで聞いたことないみたいに、体温より少しだけ温かいように、何だか美しく感じられて、もう一度、はっきりと呟くの。「暗くならない内に帰ろう」って。それともある人は、急に手紙を書きたくなるかもしれない。書きたい気持ちはあるの。書きたい相手もいる。伝えたいこと。伝えたいことはね、「
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