聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
は(と言っておきましょう)、私の声を聞くのね、それとも風の音かもしれないし、雲の影の親しみかもしれないし、或いは地下のディーゼルエンジンの爆発音かも、何でもいいの、誰かがそれを、私の声と知らずに聞いて、ほんの少しだけ、自分の世界に違和や不和を感じるの、馴染みある世界に、忘れかけていたような、それとも全く新しいような、「意味」を見いだすのよ。
(意味!)と彼らは思って、思った途端に意味を捨てて、家の中が外みたいな、あべこべな感覚、混乱するほどではないのだけど、寧ろ好奇心に近いような何かを感じるのね、それで多分、自分でもよく分からない何かを探しに出かけるの。それから彼らは、いつもより少しだけ誰かにそ
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