聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
 
十歳で死んでもいいし、もしかすると、私の生死を、誰でもいい誰かに委ねたって構わない。そう、暁世、うん、手紙にしよう。ここからはちゃんと手紙。

『私はある日、私の身体を、私の最後の所有権を、自然に放棄するのよ。自然にね、或いは不自然であってもいい、そのとき私には声がない、もはや私には優しい時間しかないの、私なんてないの、ただ透明な「私」という言葉だけが浮いてて。汚泥の底で、それとも澄んだ金魚鉢の中かしら、ともかく誰かの「手」に縊られて、私は死ぬ、死んで、死んで、死ぬ。この世界から完全に消えてしまう。
彼は(或いは彼女は彼らは彼女らは)、私を殺したことにも気付かずに、それでもきっと、何人かは(
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