聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
 
朝私は小説を五十枚ほど書いて、それは多分、私にとっては相当早い創作ペースで、五時間くらいかかったのだけれど、書き始める前、弟に言い残したことが気にかかっていた。でも弟は私を気にかけてなんかいないだろう。少し書いてから、暁世に話そうと思って、とりあえず画面に意識を集中させてから、十五分くらい経ったかな、と思ったら、五時間経っていて、今書いていた小説を読み返すと、小説の中の「私」はもう二、三時間くらい、浮かれたように喋り続けたり、寝転んだり跳ねたりしてて、その間私はただ、何というか新しいダンスミュージックを次々に衝動買いしていると言う感じに似た感傷に浸っていた。……音楽の場合は、外からの情報に私の心が
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