聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
 
いとも言える」
 そう言って、煙草の火を消すと、不意に立ち上がって、「もう眠ります」と言って、マグカップを洗って、台所を出て行った。


3(紗々のノート)
 眠れないので書きます。
 手紙を書くときは、意識が生活している私から離れて、ただ書くためだけの「私」になれるので楽です。今は生活的なことが具体的にどのようなことを指すのか分かりません。何時何分かに起きて、何かしたり何もせずに寝てたりしてた私の行動に伴う感情の分解と再解釈の散文的羅列が「生活的なこと」なのでしょうか。
 生活とは決まり事と、決まり事からの逃れ方についての決まり事でしょう? 私は私を選択なんてしたくない。私は自分が
[次のページ]
戻る   Point(2)