聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
誰でもない誰かでさえない何かであることを選んだときだけ、あなたは正しく誰かになれる。それは、ひどく、ひどく怖いことよ。きっと、始めて言葉を作った人間も、同じ恐怖を、或いは不安を感じていたと思うわ。いい? 万人なんていないの。ただ、あなたひとりきりだけが、本当に感じて、本当に知って、本当に考えなくてはならない。そして、全てにお別れすることを決心しなくてはならない。そうして初めて、あなたと私は、本当の意味で、出会えると思うの。……寂しい話になっているかもしれないのだけど。
暁世は暁世、私の愛する弟。(私は運命論者だからね)でもそれは、謂わば別の次元の話。……私は、一元論者でもあるし、そうじゃないと
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