聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
 
的限界』でも『認識の限界』でも『物質としての脳の限界』でも何でもいい、何か哲学か衒学めいたことを言うだろうと思ったからなの。
 そこに言葉があれば、『はい、ここからここまでが分からないものですよ』なんて言ってね、怖くも何ともない、それはただお盆に載せられた言葉でしかなくなってしまうの。深海魚と同じね。『はい、これが未知のアンコウです。水圧が弱くて破裂してしまいました。深海の底の暗闇で生きていたときの姿は想像に任せます』ってね。
 ……話が変わるみたいだけれど『人間が認識をやめたとき、そこには全てがあります』と言う言葉が仮に真実だとして、それじゃ人間はみんな死ななくてはならないよね。そう、死なな
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