聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
 
のような気がした。)僕はかなり酔っているのだろうか。
 紗々はしばらく、話の緒を探すかのように、椅子の上で両膝を立てたり、片膝を立てたりしながら、少なくとも眠気はない様子で、躊躇うように唇を動かしては、また口を噤んだりしながら、「そう、ね」と言って、グレープフルーツジュースを口に含んで、少し時間をかけて飲み下し、「うん」と言うと、少し声を大きくして「話を戻そう」と言った。何か不思議な活力を、頭の中で探し当てたみたいに。手をこすり合わせながら、「えっとね」と笑って、
「絶対に分からないこと、を暁世に答えさせたくなかったのは、あなたが『意味論的限界』だとか『統語論的限界』だとか、あるいは『形式的限
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