聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
 
ように『カプチーノの泡』のよう、と言われるのだろうけれど。でもカプチーノとの違いは、仄めくように澄んだ、甘い味のする冴えた黒い部分と、どこまでも白くて、儚さを思わせる白い泡とのコントラストだろうね。カプチーノと比べれば、もちろん黒いビールに軍配が上がるわ。カプチーノは、綺麗なのは口を付ける前の一瞬だけだし、もちろん立体的な美しさはないから」
と言って、もう酔いが醒めかけたかに見えた紗々は、「少し飲ませて」と言って、グラスに注いだばかりのビールを、三分の一ほども飲んでしまった。「これ、本当に酔わないみたい」と言って、「でも、もうやめておく。私には多分、酔いと素面を区別する判断力が、人並み外れて、欠
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