聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
 
安なの。ほら、酔いはじめって、いつもの自分みたいなんだけれど、でも何処か違うような気がして、不安になって、うん、もう少しだけ飲むと、全然平気なんだけれど。ごめんね。ビール、綺麗に注げるといいね」
と言った。
 僕は、缶を開けて少し時間が経っていたから、泡が綺麗に立たないかもしれないな、と思いながら、缶の中のビールをグラスの底に一気に注いで、それからゆっくりグラスの縁ぎりぎりまで流し入れると、思ったよりずっと、上手い具合に綺麗な泡が立ったので、テーブルの真ん中辺りに少し自慢げにグラスを置いた。紗々はそれをじっと見ながら
「完璧すぎるね。すごいね。ビールとは思えない泡ね。これはきっと定型句のよう
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