聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
 
、言葉を正しく受け取るなら、光を、私たち自身が光だったことを。未来でも過去でもない記憶を……曖昧だわ、言い過ぎね……つまり、今この瞬間から次の瞬間には絶対に行けないことを、私はいつも始まりの場所にしか生きられないことを、言葉によって思い出すの。でも私は、その、世界の不断の一回性という驚異的な事実にさえ慣れ親しんでしまう。だから、こうして、ときどき思い出す必要があるというわけなの」
と言ったあと、彼女はしばらく瞑想者のような体勢のまま、沈黙を保っていたのだけど、不意に両手をゆっくりと肩幅ほどに拡げてから降ろし、「ごめんね」と言って、声を出して笑って、
「いつもの自分って何だろうね? 酔うと不安な
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