聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
 
上苦いグレープフルーツジュースがあったら、苦すぎて飲めない」
「ねえ、紗々…」
「ちょっと待って、暁世くん。まず初歩的な質問だよ。絶対に分からないことがあるとすればそれは何だと思う?」
 紗々は少し顔が赤くなっていて(あるいは興奮からか)、先ほどよりも大分早口になっていた。僕の答えを待たずに、
「別に分からなくてもいいの。例えば、時計はいつでも何処でも、見るひとに向けて設置されているから、時計の針は右に回る。世界に誰もいなければ、或いは全てを裏側からしか見ない存在がいたなら、或いは全てを内側から見る存在がいたなら、時計の針は右に回ると言う決まり事は、意味を成さなくなるでしょう?
 私たち
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