聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
、愛おしい何かを考えているような表情で、中空を眺めながら吸って、煙を吐き出して、
「二度言うのは、お世辞じゃないからだよ。でも、お世辞は軽いから百回でも言えるね。本当の気持ちを込めるのは、難しいね。薄っぺらな言葉で相手が感激することもあれば、一世一代の告白が嘲笑されて終わることもある。だから、うん、正直者は馬鹿を見るのかな。言葉に気持ちを、全てを込めようとするから、言葉が見つからなくて誤解されるし、本当のことも嘘に思われたりする。本当の『愛してる』を知っているひとは、『愛してる』じゃ伝わらないことに苦しむから、だからね、だからそこに詩があるし、小説があるし、芸術があるんだよ。と言うか産まれたんだ
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