聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
が、暁世にもきっとあるはず。私には分かるの」
と言ってから、紗々に向かい合って座った僕に、
「私、少し酔ってるかも知れない。変なこと言ったらごめんね」
と彼女は、口を噤むには苦しいくらいの懸命さが必要なのだ、と言うような表情をしたので、僕は「いいよ。分かってる」と言う表情をしたつもりだったのだけど、成功したかは分からなかった。
彼女から一本煙草を貰って、火を着けてから、改めて「紗々のことが好きだから」と言ってみた。ああ、僕は酔ってるな、と思った。僕も紗々ほどではないけれど、アルコールに強い方じゃない。紗々は「ありがとう」と言って、眼を瞑り、もう一度「ありがとう」と言った。彼女は煙草を、愛
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