聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
しまって、もう一本ビールを取り出した。紗々には瓶のグレープフルーツジュースを出して、「これでいい?」と見せると、彼女は目だけで頷いたので、シンクの水切りのグラスを取ろうとすると、「苺のマグカップがいい」と言って食器棚を指さした。
マグカップを取りながら、「これ、僕のだよ」と言うと、「それ、気に入ってるんだ」と紗々は言った。
僕がマグカップを紗々の前に置いて、グレープフルーツジュースを注いでいると、姉は何だか、本当はアルコールに滅法強くて、ビールを三本は飲んだんじゃないかと思えるくらい上機嫌そうな顔をしていたので、僕は、書きものが首尾よく終わったところなのかな、と思った。
「ああ、素晴らし
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