聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
たままのシリアルの箱を見ると、急に何かもっと別の、身体に自然に染みていくようなものが食べたいと思った。シリアルは僕の脳に馴染まない。牛乳は僕の血に馴染まない。
「ねえ紗々」
紗々はビールの缶をゆらゆらさせて、何か嫌なことを考えているようにも見えたのだけど、
「何だい? 暁世くん」
と存外上機嫌そうに答えた。それから
「ビールあげるよ。ちょうどよかった。これ以上飲んだら私の小さな脳細胞が、透明になるところだった」
僕はビールを受け取って飲んだ。ちょうどいいぬるさだった。飲んでから、大分喉が渇いていたことを思い出して、半分ほど残っていたビールを一気に飲み干ながら、冷蔵庫を開けて牛乳をしま
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