聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
 
は現実との接点が無く、触感も無い靄のような夢だった)……起きたときには、もう夜中だった。天井に手を伸ばして、「手」と言ってみたけれど、あまり現実感がなかった。静かだった。何だか身体が精神の一部みたいな感じがした。
 椅子にかけてあった薄手のウールのコートを羽織って(もう丸一日以上パジャマを着たままだ)台所に行くと、灯りが付いていて、姉がテーブルの前の椅子に座って、ビールを飲んでいた。大分時間をかけて飲んでいたらしく、テーブルには缶の形に小さな水たまりが出来ていた。
 僕は冷蔵庫を開けて、牛乳を出して、食器棚から深皿を出して、姉の前に座った。シリアルを食べようと思ったけど、テーブルの端に置いたま
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