聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
と思った。でも、そもそも姉は悲しいのだろうか、姉は書きものが好きで、よくひとりで一日中でも長い文章を書いていて、夜中にいきなり僕に見せに来たりする。今も隣の部屋で、僕に話したことなんか忘れて、軽快にキーボードを叩いているのかも知れない。
「僕には寂しいとき、寂しさを寂しさのまま受け止めてくれる相手がいない。紗々を除けば」
と口に出してみた。
ひどく孤独な気持ちになって、夕方近くになって睡眠薬を飲んだ。数も見ずに、半ば自棄になって数錠飲んだせいか、それとも長いこと睡眠薬を飲んでいなかったせいか、夢も見ないような、長くて青い眠りに就いてしまって、(いや、確かに夢は見た気がするのだけど、それは現
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