聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
…けれど私には感情論しか無いのかもね。ひとに惹かれたり、何か嫌だと思ったりする、多分、私は私の、この感情の他には。何も分からないのかもしれない」
姉はそう言って、いつもの癖で急に黙り込んで、ポテトチップスを食べ終えると、「ひとりになりたいし、書きものをしたい」と言って、ポテトチップスの袋を綺麗に四つ折りにしてからゴミ箱に入れ、空っぽのエビアンのボトルを持って、部屋を出て行った。ドアが閉まるとき、紗々が、殆ど聞き取れないくらいの声で何かを言った。「私は知りたいの」と言ったように、聞こえた。
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そのまま眠ってしまおうと思ったけれど、僕は長いこと眠れなくて、姉の悲しみが移ったのだと思
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