聞こえない風の音が、永遠に鳴り続けてて/由比良 倖
 
、握りつぶして、部屋の隅のゴミ箱に向かって投げ入れようとしたけれど、入らなかったので、すぐに立ち上がって、歩いていき、身をかがめて、ひしゃげた箱を拾ってゴミ箱に入れて、またすぐに僕のベッドの定位置に戻ると、「煙草はない?」と訊いた。僕は指先だけを上げて、「タンスの一番上」と言った。
 紗々はすぐに立ち上がって、タンスを開けて、
「キャメルと、えーとマールボロと、ラッキーストライクと、……ペルメル(と彼女は英国風にわざと格好付けて発音した)と、セブンスターね、節操ないのね、少しずつ減ってる」
「それ全部紗々に貰ったやつだから」
 紗々は何も言わずにラッキーストライクを取りだして、ベッドの上の
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