白いシーツの波跡/まーつん
リネンの香りは白い波
私の頬は、そこに浮かぶヤシの実
愛しい女を隣に横たえ
長い夜の海を渡りたい
夜明けの岸辺の砂浜に
船のキールが軋るまで
その背中を指で
なぞっていたい
上下する肺のふいご
枕に押し付けられる吐息
生きるのに理由はいらない
ただ波に乗る心地よさに
身をゆだねるだけ
柔らかな
波の谷間に分け入る時
夜の船出は成就する
二
いつしか天井が開け
随行する羊雲が
月明かりに縁どられ
星空に轍を残していく
私たちは
小舟の襟に腰かけて
裸足の先を、揺蕩う眠りに浸す
水面に顔を沈めれば
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