水中に居ると何かを思い出せそうな気がする/ホロウ・シカエルボク
 
のの一種なのかもしれない、息が続かなかった自分への怒りなのか、それとも俺という存在を軽く突っぱねて見せた水中という場所への怒りなのか、俺はそれ以上バスタブに浸かっている気にはならなくなった、思い切り栓を引っこ抜くと水は渦を巻きながら吸い込まれていった、気に入らないから排除する、これじゃまるでどこかの独裁者だ、首を横に振りながら浴室を出る、それでも確かに身体は少し落ち着きを取り戻した、窓を少しだけ開ける、夕刻の数時間だけ部屋に吹き込む風がある、それが吹けばもう汗をかかなくて済むのだ、オープンイヤホンで古いロックを聴く、古いロックなんていう表現が正しいのかどうかわからない、俺にしてみればそれは少しも古
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