空に還る雨/まーつん
浮くほど軽くなった気分で
翼を気取って両腕を広げると
流水に足を取られた身体が
バランスを失い、宙に舞った
雲間から射す陽光と
ぱらつく雨を浴びながら
パジャマ姿の私は
眼下の広大な滝つぼへと
落ちていく
ちぎれ雲の下を舞う鳥と
一瞬目が合った
あいつには、どう見えているかなと
脳裏を掠める些細な問いかけ
雨上がりと共に
滝の水は尽き
全ての憂いを飲み込んだ雨水が
お日様の呼び声に応え
私と入れ違いに
無数の光の滴となって
天に昇っていく
すれ違う光の粒から
誰かの悲しみが
微かな空気の震えとなって
私の鼓膜に触れてくる
その中に
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