子供のころ、近所には……/大町綾音
は一度だけ、子供たち一行でその牧場の隣にあるキャベツ畑に──もちろん、このキャベツは羊たちの餌だったろう──モンシロチョウの卵を取りに行ったときのことだけを覚えている。その光景が、後ろで触れる「しろばんば」のなかで、子供たちがバスや乗り合いを追いかけて村はずれの隧道(トンネル)まで行く、その様子にそっくりだった……
そのころのわたしたちは、そんな野山でミニ・スキーと呼ばれる玩具のスキーで滑ったり(残念なことに、わたしはそれが滑れなくって、兄たちを置いて一人で泣いて帰るようなこともあった)、広大な公園でそれこそ誰からも見つけてもらえなくなるようなかくれんぼをしたり(大人が見れば「広大」ではな
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