子供のころ、近所には……/大町綾音
 
はなかったのかもしれないが、子供たちの目から見れば、当時でも現代でも十分に「広大」である)、あるいは白鳥の飛来する(そのころは、鷺)沼の畔にある原始林で、木の幹にからみつく蔦をブランコにして楽しんだり……とまあ、そんな野蛮な遊びに興じていた(女の子たちが野蛮でなくなるのは、小学校か中学校を卒業して、ゴム跳びなんていうイジメをしなくなってからである)。

 こんな思い出が、「文学」と結びつくのかどうか分からないが、少なくとも妥協点として、「芸術」に結びつくことがあれば、それでいいのだろう……と、数日考えていた。

 ところで、井上靖の「しろばんば」は、冒頭こんなふうに始まる。

「その頃
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