『薬屋のひとりごと』における「恋愛システム」と「文化システム」/大町綾音
 
は、現代の恋愛消費文化における“共感とギャップ”というコードに応じている。完全無欠ではなく、ちょっと抜けていて、けれども一途──そうした人物像に「恋愛幻想ではない、関係性のリアル」が付与されている。
 これは、男性が「助ける者」「導く者」としてではなく、「対等な関係性の中で笑われる者」「振り回される者」として、初めてヒロインに“許される存在”となる構造だ。

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III. 恋愛システム──“視線”と“対称性”の物語

 マオマオとジンシの関係には、両義的な緊張が走っている。マオマオは常にジンシの「地位」や「美貌」を冷静に切り離そうとし、彼を個人として扱おうとする。だが、そのこと
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