百葉箱のなかの祈?書。/田中宏輔
 
ファウスト』第一部、相良守峯訳、読点加筆)
水はえぐった岩のなかの石だ、
            (マクリーシュ『地球へのおき手紙』上田 保訳)

現在の見方は、このような単純なものではない。三十代前半に、彼はさまざまな苦難に遭遇したが、それらを克服することによって、以前とは違った目で、事態を把握することができるようになったのである。はじめの間、彼は、まわりが変わったと思っていたのだが、会う人ごとに、きみは変わったと言われることで、実は、まわりが変わったのではなく、自分自身が変わっていたのだということに気づかされたのだという。ヨブ記を何度も読み返したらしい。魂の方は神を信じたがっていたよう
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