散歩うた/足立らどみ
 
な場所での出来事から詩が始まり、波の音や海しぶきといった具体的な生活感覚が用いられている 。どちらも非日常的な事件ではなく、散歩や通勤といった平凡な行為に詩情を見いだすスタイルである。
? 口語的表現と散文詩風の語り口: 詩語ではなく日常語で語りかける点でも共通する。吉野詩は短歌や叙情詩らしい改まった言葉ではなく、物語のように平易な文体で書かれている(例: 「いつものことだが…」 )。谷川詩も散文詩形式を取り、語り手の少年が思わず口に出す「なるほどね」という実感的な語りを含む 。両者とも詩的誇張を避け、等身大の人物が率直に語りかける書きぶりである 。その結果、行間や沈黙(文学的余白)が生まれ
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