四月終わりのメモ/由比良 倖
ような手触りの、その考え方はひたひたしている。或いはのたりのたりと。
西洋哲学はどんどん鋭くなるメスのよう。硬質で、徹底的に精神の病巣を取り除いていく。世界を切り刻み続け、縫い合わせ、レントゲンを撮り注射する。モルヒネやアセトアミノフェンやコデインが跋扈する世界。幸福までもドーパミン、セロトニン、エンドルフィンに換言してしまう。
ヴィトゲンシュタインは極限まで鋭くて、読んでると脳内都市の光度が、真っ直ぐにカットされたクォーツみたいに澄んでいく。その透度の確かさを知覚できることが気持ちいい。ヴィトゲンシュタインの書籍は八冊持っていて、それぞれのクラリティが合わさって出来る、ヴィヴィッドでカラ
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