四月終わりのメモ/由比良 倖
古いおとぎ話の領域から響いてくるように感じる。ふと、「生きてる」と思う。心の片隅に、明るいピンク色の影が差したように感じる。もはや死出の旅への準備中としか思えないような、ぼんやりとした影を纏っただけみたいな僕の心にも、まだ何かしら、生きていることの喜びの残滓のような、これから産まれようとしている希望の萌芽のようなものがあると知って、僕は少し笑う。半分諦めている。そして半分は、ピンク色の薄明かりが心全体に拡がることを願っている。
自分にとっての、他人とは決して分かち合えない、きらきらした感情、孤独の闇の中でまばゆく光るダイアモンドみたいな、鋭い、ほとんど痛くて息も出来ないほどの気持ち。それを忘れ
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