四月終わりのメモ/由比良 倖
からぽとぽとと落ちてきたみなしごたち。僕も、父も母もまた、そして全ての人類が、独立した宇宙として痛みを抱えている。人は本当は、他人の、そして自分の本当の内面に出会いたくて仕方ないんだと思う。それなのに各々の空間を、まるでひとりっきりで生きている。それぞれ孤独に満ち足りた、あるいは何かが欠落した宇宙の真ん中で暮らしている。
張り裂けるように純粋な赤は何処にあるのだろう? 春の終わりと夏の始まりを縫うように、初夏の風が差し込んでくる。僕は寂しさに揺られながら、甘くて痛い空の底にいる。ナイフ一本で簡単に死んでしまえるこの身体。僕と世界との境界は、そんなに明確ではない。
昔はナイフはそんなに好きじ
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