四月終わりのメモ/由比良 倖
 
でしまう。哲学書でさえそうだ(ヴィトゲンシュタインを読むためだけにドイツ語を学んでもいいくらい。僕は言葉と音楽はほぼ同一だと感じていて、大事なのは意味よりも、語勢や音やリズムや字面だと思っている。翻訳は音楽に例えるならコピーバンドの演奏みたいなもので、どんなに上手でも、翻訳された時点でオリジナルにある、作者の個人的な思いやリアリティは失われてしまうと思う)。

 本の匂いが一番好きだ。新刊の涼しい匂いも、古い本の黴びた匂いも。


ぬるく、ぬるく、あたたかく
そして電線のように、光のように


――地球が完璧な終焉を迎えるまで。


花が枯れるのは、あれは、宇宙を映し
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