四月終わりのメモ/由比良 倖
 
映しているからだ。
――静けさの中に声を忘れてきた蝶。
(驚きをください。)
ルー・リードの悲しさ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの悲しさ。……
(どんな怖れだっていい。)

 世界の終わり。全ての建物は、葬儀を終えてみんな帰った後の墓地のように真っ暗で、人々が命をかけて描き続けた物語は風に吹かれて舞い上がり、あるいは轢かれた小鳥のように濡れた地面にへばり付いている。

 狭い場所にいると、世界が深く感じられる。夜中、この国の誰もが眠りに就いた時間が好き。先月、机の上に、庭に咲いていた木蓮の花を飾っていた。庭に咲いていたのをふと嗅いでみたら、ものすごくいい匂いだったから。木蓮(
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