四月終わりのメモ/由比良 倖
 
忘我や自失、非在することに興味がある。僕が詩人や作家、ミュージシャンに憧れるのは、彼らが音楽を作るのではなく、音楽が空っぽになった彼らに取り憑いていると感じるからだ。あるいは自分よりもずっと、人を幸せにしたいという優しさを感じるからだ。自分自身は何ものでもなく、ただ言葉や音楽の通り道に過ぎない。そういうあり方が、僕にとっての理想だ。
(どんなに静かに生きていても、揶揄や批判は受けるのだ。悪人呼ばわりされることさえある。それなら寧ろ、言い過ぎるくらい、人には出来れば、自分を抑えないで、自滅はしないで、あなたが生きているだけで嬉しいのだから、と言い続けていたい。多分誰よりも、自分自身に対して。)

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