四月終わりのメモ/由比良 倖
が特別な人間であるという錯覚とか、約束された幸福の、移ろいやすい薄っぺらさとか。人が羨むものを全て得たところで、虚しさは今よりずっと深くなると簡単に想像出来る。成功者を羨ましいと思う気持ちも、全然湧いてこない。
「消えたい」という言葉が、今の僕の気持ちを一番ぴったり表している気がする。感情より論理を大切にしましょうと言う人もいれば、論理を超えた感情こそが人間の幸せにとって大切なものだ、と言う人もいる。けれど僕は、論理的に、計画的に得られるであろう社会的な成功には、もちろん興味が無いし、感情的な喜びは一時的なものなので、それも欲しくない。喜びの後にはすぐに虚しさがやって来るからだ。
僕は忘我
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