四月終わりのメモ/由比良 倖
ない。
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人間であれればそれでいい。それ以上は何も求めない。中原中也とニック・ドレイクが生きていたこの地上に僕も生きていたい。聖人になんかなりたくもないし、神さまとお近付きになれなくてもいい。
初夏の風。アクセサリーは眼鏡とネックレス以外付けたくない。マグノリアの匂いの香水だけを付けていたい。
昔僕は、「せっかくの人生だから、一回くらい最高の苦しみを味わいたい」と思っていた。実は今もそう思っている。刹那刹那を生きている。
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自分を虚しさから救えるのは自分しかいない。僕の中には、確実に満ち足りた場所がある。それは分かってる。自分の内面にアクセスすることが出来な
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