四月終わりのメモ/由比良 倖
ものなんて何ひとつ無い。ただひたすらに、偶然の連続を受け入れるしかない。そういう教訓。
一生病気のまま寿命を終える人もたくさんいる。僕は生き残った。何故かは分からない。地下から水でも湧き出して、たまたまぷかぷか浮かべたのかもしれない。苦しみからは何の経験則も得られない。自力で助かる方法はひとつも無い。そして、いつまた世界の亀裂にすとんと落ちるか分からない。「あ、落ちる」と感じることの恐怖からは、正反対に走って逃げるしかない。薬を飲んで毛布にでも包まれるくらいしかない。
世界には答えは何ひとつ無い。僕の心だけが答えだ。どんなに大きな賛辞も、名誉も、褒め言葉も、全部移ろいゆくだけ。
一瞬の
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