肉体と精神を失った日本人/室町 礼
 
ていく。
思想家で詩人の吉本隆明はヒマなときはいつも山手
樹一郎を読んでいたという。息をつめて深い水の底
に潜っていくような理詰めの思考を続けていると、
人は、ヘタをするとそこから浮かび上がってこれな
いときもある。
そんなときに山手樹一郎の着流し浪人小説が気休め
や気分転換になったのだろう。
しかしこんなものを我々がづっと読めるか?
村上春樹ってのは令和の山手樹一郎なんだよ。ある
いは令和の宇能鴻一郎といってもいい。
宇能鴻一郎てのは官能小説家だが、これがもう全部
一緒。同じような男女が同じような出会いをして同
じようなセックスをする。それが延々と続く。生涯
446作
[次のページ]
戻る   Point(2)