砂の城の考察 #3/まーつん
 
ま、薄氷色に凍り付いている。だらしなく開いた口は、床によだれを垂れ流し、声にならない悲鳴を上げていた。

「お前だって、ああなっていたかもしれないんだ」
 
 長髪の男が、黙り込む私の背中にまた語り掛ける。彼の眼にも、なぜか私が壁の中に見ている幻視が見えるらしい。

「だがならなかった。お前を踏みとどまらせたものは何だ?  誰かの諭しか?」

 背後に現れた長髪の男(彼もまた、私が生み出した幻覚だろう)、そしてその男の言葉に触発されて、前方の壁に映し出されたもう人の自分という、二者の間に挟まれた私(書き物机に向かっている)。私はこの構図を面白く思った。空想は私を決して孤独にはしない
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