砂の城の考察 #3/まーつん
。そこで受刑者が考えるのは、再び娑婆に出たら、如何に法の目をかいくぐって誰がを傷つけるか、ということになる」と、黒髪の男。
人間への信頼を捨てきれない私は、間をおかずに言い返す。
「だが、少ないが、更生する者もいるだろう」
男はじっと、私を見つめた。
「そうだ。少ないが、そういう者もいる。彼等は何故更生したと思う ?」
私は壁から視線を離せないでいた。幻視の中に浮かぶもう一人の私は、今や独房の床に背を丸めて横たわっていた。壁を引っかき続けた指の爪は剥がれかけ、革一枚で繋がっている、その指先は渇いた血で覆われていた。閉じることを許されない眼は、己の苦痛を凝視したまま、
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