砂の城の考察 #3/まーつん
 
付かなかった。私はしばらく、部屋の壁を見つめてから、また答える。

「だがそこで伝わるのは、命への尊重という概念ではなく、ルールを破れば罰が下る、という経験則だ」

私の見つめる壁には、もう一人の私が映っていた。その男は、狭い独居房の中で、鉄格子の向こうに切り抜かれた四角い青空のつらなりを見つめている。白いものが混じった髪を肩まで伸ばし、その荒んだ顔は無精ひげに覆われている。映画やドラマに出てくる囚人の安直なイメージが、ブレンドされた自画像。それは、暴力以外に怒りを吐き出す術を知らなかった、もう一人の私の姿だ。

「そして、命を尊重する気持ちが芽生えない限り、暴力への欲求は止まない。そ
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