物語は終わり、別な物語がまた始まる/山人
 
で、山歩きをしたいがためにこちらの移り住み、仕事はしていない。さらに外向的で明朗、だれとでも仲良くコミュニケーションが取れるという、まさに私とは真逆にいる方である。互いに話をし、つきあうことにより、この人とは合わない、あるいは合う、といった感覚はだれにもあるものだが、H氏は私より山に精通し、知識が豊富だ。よって私はずいぶん彼を頼っている部分もある。貧乏な私と裕福なH氏という取り合わせは奇妙なものではある。それは、同じ傷を舐めあうような関係性とは真逆の関係であり、それでも同一の目的に向かうことに障害になるものではない。私が彼のように高学歴で高収入の会社に就職などできようもなく、私が今まで来た道は唯一
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