物語は終わり、別な物語がまた始まる/山人
唯一無二のものであったということだ。救いはH氏よりスキーが巧いということくらいだろう。彼とはもう一回ほど山行きをする計画がある。それを最後に今期は同行することもないだろう。彼はさらにこれから別な山域へと足を伸ばし、遊び、悠々自適な世界を謳歌するのである。
私の中の冬がしおれかけている。しおれてぐずぐずになったゲル状の中でうごめいている。まだ訪れていない世界のことを心配し、憂いている自分がいる。
H氏は再び新しい遊びに精を出し、私は現実へと帰ってゆく。それは運命ではあるが、宿命ではない。
戻る 編 削 Point(9)