ピーターと僕/いとう
 
泣き濡らした彼女の夜を
僕も彼も知らなかった
そんな思い出
彼が嫉妬したのかなんて
そんなありふれた比喩は使わないけれども
1人の女を取り合っていたかどうか知らないけれど
僕と彼はそんなに仲良しではなかった
一方的に彼が喧嘩を売ってきて
僕は余裕であしらっていたのだけれど

さて、月日は過ぎ
否応なく終わりは訪れる
それはあたりまえのようにしかも予定どおりに
突然訪れるのが世の常なのだ

ある時期の1週間ほどの出張のあと、
僕の部屋から彼女の荷物は消えていた
じつはこの話はずいぶん昔の話で
2人とも若くて愚かだったことは今はわかっているけれど
そのとき僕の部屋
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