ピーターと僕/いとう
 
部屋に取り残されていたピーターのことを思うと
今でも不憫でならない
彼は彼女の荷物にもなれずに
たぶん嫌いであろう僕の帰りを待っていたのだ

いろんな知り合い関係から情報を集めて
彼女がいなくなった理由を探ったところ
僕の数年来の友人と彼女が浮気をしていたことに初めて気づいた
それを知った夜に
僕はピーターと2人で酒を飲み
そしてその日の夜明けに
彼を近くの河原に捨てに行った
彼はこれまで感じたことのない広い空間に驚いて怖がって
しばらくのあいだたぶん嫌いであろう僕のあとをつけていた
僕は畜生の馬鹿さ加減に(というのは大変失礼なのだが)やるせなくなって
同レベルの感情に基づいて走って逃げた

それから僕は
その僕の友人だった男をぶん殴るチャンスをうかがっているのだけれど
それはいまだに果たせていない
そしてそれ以上の確率の低さで
ピーターと再び会うことができないのも知っている
彼がもう生きていないはずなのも知っている





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